クリスマスに欠かせない習慣
フィンランドに暮らす人々にとって一年で一番大きな節目、クリスマスがもうすぐやってきます。何がどう節目なのか、クリスマスのキーワードを簡単に時系列でリストアップしてみますね。
Joululoma/ ヨウルロマ
家族や親戚が集まるクリスマス休暇
Joulusiivous/ ヨウルシーボウス
休暇前までに済ませる家中の掃除
Joulupuuro/ ヨウルプーロ
イブの朝にいただくお米のミルク粥
Joulurauhan julistus/ ヨウルラウハン・ユリストゥス
イブの昼間にテレビで静かに観入るクリスマス平和宣言
Joulusauna/ ヨウルサウナ
イブの夕方に体を清めるクリスマスサウナ
Jouluruoka/ ヨウルルオカ
皆で囲む毎年恒例の夕食
Joulupukki/ ヨウルプッキ
夜に家々を訪れて子供達にプレゼントを届けるサンタクロース
この辺りで皆様お気づきでしょうか?そうです、フィンランドのクリスマスはまるで日本のお正月。お正月休み、家族や親戚が集まる前には大掃除。大晦日に「ゆく年くる年」を観ながら新しい年を迎えたら、お雑煮とお節料理にお年玉…。伝統的なお正月の過ごし方をフィンランドに置き換えると、クリスマスになるように思います。「一年で一番大きな節目」とご説明したのは、こういう事情なのです。
日本のお正月の習慣一つ一つに寿ぎの気持ちが込められているように、フィンランドのクリスマスにおける習慣にもそれぞれに意味合いがあります。今回はその中から、クリスマスツリー(Joulukuusi/ ヨウルクーシ)に注目してみましょう。
クリスマスを目前に控えた通りの風景です。男性が担いでいるのがクリスマスツリー。フィンランドでは生のもみの木を家の中に飾るのが主流です。
都市部にはツリー屋さんが期間限定で公園などに出現するので、そこで購入するのが一般的。部屋の天井の高さを想定しながら枝の広がりが好みの一本を選んで持ち帰ります。
もっとこだわって木を選びたい人はツリーファームへ。道路に出ている看板には「JOULUKUUSIA/ クリスマスツリー」と。
「赤ちゃんツリー(を踏まないよう)に気をつけて!」というサインを横目に、注意深く好みのサイズ、形のツリーを見極めます。
これだ!というツリーを選び、お借りしたノコギリで切ったらファームの方にお任せ。シュルッと網がけして持ち帰りやすくしてくれます。(この後の姿が、冒頭の通りを行く男性が担いでいたスタイルですね。)
このファームに立ち寄ったのは12月初旬だったのですが(この年はクリスマス直前まで雪がなかったのです!)各地への出荷最盛期で準備万端のツリーがこんなことになっていました。すごい迫力!
家に持ち帰ったツリーは専用スタンドに立て、周りに布を敷いたら下準備は完成です。スタンドには水やり用のパーツがついているので、クリスマスシーズンの間は暖かい部屋の中で乾燥しすぎないようにツリーのケアをします。なぜかうちの家族はこの水やりの際に角砂糖を一つ入れるのですよ。「この方が長持ちするから…」と義母談。こういう謎伝統(失礼!)が垣間見えるのも、家族で過ごす行事ならではですね。今ではすっかり私もこの流派に。きっと私は何歳になっても毎年ツリースタンドに角砂糖を入れると思います。
そして布。もみの木は針のような葉を落とすので、日々様子を見ながら布ごと葉を集めて外へ。ポインセチアの鉢植えや藁細工の飾りよりも遥かに手がかかって愛着が湧くのがツリーの魅力です。
うちでは毎年クリスマスイブに親族で揃って飾り付けをします。夫や義姉にとっては子供の頃から変わらない飾り。シンプルにしたい夫とキラキラさせたい義姉の攻防も毎年の恒例。毎年その様子を笑いながら、私は自分好みの装飾をこっそりせっせと飾るのです。
我が家のツリーは残念ながら良い写真がなかったので、数年前に会社のクリスマスカード用に別の場所で撮影したカットを。ガラスや布でできたシンプルな飾りを控えめに施してツリー自体を愛でるスタイルをよく見かけます。
ツリーの美しさ、緑の香り、お世話を通して生まれる愛着。生のもみの木を買ってきて飾るこの習慣が欠かせない理由はたくさんあるのですが、何よりも大切なのは自分自身の心の機微だと感じます。毎年恒例の作業を通して、自分を定点観測するような感覚に…。今年も変わらず一年を過ごせたことに感謝の気持ちが湧いてきます。クリスマスツリーを起点に私自身や、周りの人々の変わらぬ日常とその有り難さが浮かび上がる大切な時間です。
キリスト教の習慣として根づくフィンランドのクリスマスは、正式には年明け1/6の公現祭(Loppiainen/ ロッピアイネン)まで続きます。ツリーやクリスマスの飾りを片付けるのもこの日。半月ほど一緒に過ごしたツリーはこの日に解体し、サウナや暖炉の薪として使用されるのが一般的です。薪が不要な場合は自治体のゴミ収集車がこの時期のみ無料で廃棄木材回収をしてくれます。
ファームや公園で見かけた数多のもみの木が、各家庭で光を宿すクリスマスツリーという習慣。どれだけ新素材が開発されても、生のもみの木を飾るこの習慣が途絶えることなく続く背景には、人々の心に宿るそれぞれの意味合いがあるはず。これも、木と共に生きてきたフィンランドの人々の暮らしの片鱗でしょうか。
最後にお知らせをさせてください。
フィンランドを含む北欧4カ国での暮らし、365日を綴った本が秋に出版されました。『北欧のあたたかな暮らし 小さな愉しみ: 365 LITTLE COZINESS』(GAKKEN刊)毎日の何気ない気づきを綴るのは各国在住者を中心とした12名。私も夏や冬の暮らしなど、あれこれ書き綴りましたので是非ご覧ください。
この記事のライター
- 2004年よりフィンランド在住。ヘルシンキ大学大学院留学、現地旅行会社等勤務を経て、2012年ヘルシンキにてオフィスウタノ株式会社を設立。メディア、イベント、ビジネスの分野にて、フィンランドと日本を結ぶコーディネート業務を担当。その他、ヘアサロン事業や日本の美しいデザインプロダクトを北欧に展開するエージェント事業も展開。
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