世界幸福度ランキング6年連続1位の国に住んで
「いやぁ、私(僕)たち世界一幸福な国に住んでいるからねぇ」というジョークをフィンランド人がとばすようになって数年。今回は「世界一幸福な国民」が住むと言われるフィンランドについて書いてみたいと思います。
このニュースが初めて報じられた6年ほど前、フィンランド人達も「え、そんなことを言われても、こんな暗い国で」とか、「自分が幸せかって聞かれたら、まぁ不幸じゃないかもしれないけど」とやや戸惑っていたのを思い出します。
今年はすでに6回目。フィンランド人も「ほら、幸福度一位だから」と折に触れこのキーワードを挟む場面も板について来ました。北欧諸国もランキングの上位を占めています。
このレポートに関しては、すでにあちこちで色々な記事が書かれているので詳細や分析はそちらに譲るとして、今回はフィンランドに実際に住んでいる私がどう感じているかをお伝えしたいと思います。
まず正式名称がWorld Happiness Report(日本語では「世界幸福度調査」)、実施は持続可能な開発ソリューションネットワーク(国連の組織の一つ)です。
この名前がちょっと誤解を招くなぁと感じたのですが、「幸せ」というそもそも100人に聞けば100通りの答えがありそうな言葉をタイトルに選んでいる点。
おーい、ネーミングした人、聞こえていますか?(笑)
そして昨年、東海大学講師の柴山由理子さんよりお声がけいただき、学生さん向けセミナーに登壇しました。幸福度一位のフィンランドと二位のデンマーク関係者でそれぞれの思う所を語り合ったのですが、その準備のため夫とも話合って頭の中を整理しました。
そのときも「幸せ」ランキングなんて難しいよね、と言う話になり、報告書がどういう指標を使っているのか改めて見たところ、自由度、寿命、国への信頼、など多くの統計データも使いながら、自分が幸せかどうかの主観をアンケートに回答する形式でできるだけ客観的に測ろうとしています。こうした指数で高得点を獲得すると「幸せになるための“環境”が整っている」とは言う事ができても、イコール幸せ、とは限らないのではないでしょうか?
それを踏まえ、学生さんたちにセミナーでお話したのは、そもそも「幸せ」って何でしょう?ということ。
他人の尺度で「お金持ち」「成功」「社会的ステイタス」は幸せにしてくれるのかどうか?また、日本も長寿の国ではありますが、フィンランドや北欧の場合、高い自由度(選択の自由)など、社会的規範や文化的な背景も影響すると思いました。
デンマーク側の登壇者でいらしたオーフス大学講師、冨岡次郎先生が「幸福度というより”満足度”調査で考えたらいいかもしれない」と仰っていたのは目から鱗で、「自分の生活、人生に満足しているか?」これはとても分かりやすい尋ね方だと思ったものです。あと、小さな日常のことで満たされる人がデンマークに多いと仰っていました。なるほど!
一方で大きな成功をしないと満たされない人もいるでしょうが、すべて持っているように見える億万長者でも不満げな人、思い浮かびませんか?
ただ、アメリカン・ドリームという言葉があるように、「なにくそ!」というハングリー精神は、大体間に合っているぬるま湯のような環境にいると「いつか絶対見返してやる」、といったギラギラした人は北欧にあまり出てこないタイプかもしれません。また、謙遜の文化や、自己肯定感が低い文化だと各国相対的な評価はなかなか難しいのではという声も聞きます。
とはいえ去年のセミナー以来、何度か自分でも立ち止まって問うようになりました。
「私はこれで満足?こうしたかった?本当はどうだった?」
こう聞いてみても、いまだ数々の失敗はありますが(笑)。たとえ失敗しても力いっぱい体験を味わってやろうと思っています。この体験は私だけのもので誰にも奪われることはありませんしね。
さて、フィンランドの人たちを見ていると、親からこうしろ、ああしろ、と言われてそれに従っている人は少ないように感じています。成人したら「自分の好きなようにしなさい」が主流ではないでしょうか。ここは儒教の文化が下地にある日本とは違う所かな、と思っています。日本なら、親の期待に応えようと無意識にでも行動することもありそうですしね。ですが自分人生劇場、人に選んでもらうのではなく、自分で決めたことであれば少なくともいい年をして人のせいにはしないだろうな、と思います。失敗しても納得いく人生と言うのでしょうか。
私の場合は、「幸せ」とは健康で、大切にしたい人達と時間を過ごし、好きなことを全うすることだと思っています。(今は古典の文学の翻訳に全力集中、辛くて楽しくて辛いです!)
さて、皆さんは如何でしょう?
この記事のライター
- 2002年にフィンランドの西部ポリに移住。フリーで翻訳などを始め、二番目の子どもの誕生と共に夫とWa Connection 設立。欧州と日本の顧客に逐次・同時通訳やコーディネーション、コンサルティング、フィンランド語書籍の翻訳を手掛ける。北欧語書籍翻訳者の会所属。コーヒーとチョコレート、そして本を心から愛する。
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