フィンランドの名物イベント「エアギター世界選手権」#Make Air Not War

奥様運び世界選手権、携帯電話投げ世界選手権、そして近年では2019年より始まったヘヴィメタル編み物世界選手権など奇祭が多いと言われるフィンランド。エアギター世界選手権も奇祭の一つとして紹介されることが多いのですが、実は「ただの奇祭とは言わせない」くらいしっかりしたイベントです。エアギター世界選手権のお手伝いをした経験がある私から、エアギター世界選手権について詳しくご紹介します。

世界選手権決勝大会最後はエアギタリスト全員でエアギター(Photo by Juuso Haarala)

エアギター大会は、1994年よりオウルミュージックビデオフェスティバルの1プログラムとして開催されていましたが、当時の若者バンド(オウル在住)の熱い掛け合いにより、世界選手権として発展。そして、1996年8月30日にオウル市で初の世界大会が開催され、以降毎年8月にオウルで行われている、四半世紀以上続く歴史あるストリートイベントです。今では世界中から人が集まり、リオのカーニバルのように一生に一度は見たいイベントの1つとも言われています。

エアギター世界選手権には、スポーツ競技と同様に大会基本ルールが存在しています。

1.演奏は、目に見えない楽器であること。エレキ、アコギ、または両方共にOK。

2.演奏楽曲(パフォーマンス時間)は60秒(使用楽曲は、どこから始まっても良し、別の楽曲を繋いだり、効果音を入れたりなど編集した楽曲もOK)。

3.競技者本人によるエアローディー(ミュージシャンのサポーター)はOK。

4.ピックの使用、ハンドピッキングどちらでもOK。

5.エアー、リアル共にバックバンドはNG。

6.ドレスコードなし。

7.楽曲使用・編集に伴う著作権など様々な権利関連の対応は競技者にて行う(自作の楽曲使用OK)。

名倉七海:2014年&2018年世界チャンピオン(Photo by Juuso Haarala)

大会決勝は以下の流れで行われ、世界一が決まります。

・15~20名ほど(加盟国チャンピオン+予選通過者)が決勝へ(予選通過者→加盟国チャンピオンの順で、それぞれ抽選にて順番決め)

・1R:パフォーマー自身が準備した楽曲で実施

・上位10名ほどが最終決勝(2R)へ

・2R:主催者が準備した楽曲で実施(2R進出者アナウンス後に初めて聞くことができる)

・2Rのパフォーマンス順序は、1Rの得点が低い人から実施

・1Rと2Rの合計得点が一番高い人が世界チャンピオンとなる

・同点の場合はサドンデスを行う

・優勝賞品は世界に1つだけのフィンランド製“リアル”ギター(手作り)& 翌年の大会出場権(ディフェンディングチャンピオン)

(Photo by Juuso Haarala)

審査員5名(音楽、ダンスなどの専門家で構成され、大会主催者が選定)で審査し、各審査員が4.0~6.0で採点し、最低と最高点を外した3名の得点を採用します。

オリジナリティ、リズム感(楽曲に合っているか)、カリスマ性 、テクニック、芸術性、エアネス(Airness)の要素を見て審査します。

さてここからは、競技ルールや大会プログラムとは違う側面についてご紹介します。

SHOW-SHOW:2017&2019年日本チャンピオン、2017年世界3位(Photo by Juuso Haarala)

その1:ビジネスモデルがある

エアギター世界選手権には、予選大会があります。各国大会とダークホース戦の2つです。

ライセンス費を払って加盟国になると、その国の大会で優勝した人は、フィンランド行きの切符を手にし、世界選手権決勝大会にダイレクトに出場できます。世界一になると、海外メディアから注目を浴び、仕事のオファーが舞い込むことも。オウルとしては加盟国の大会やエアギタリスト達を通して、オウルを世界にPRできるメリットが生まれます。

非加盟国の人や、加盟国の大会で敗れた人は、決勝前日にオウルで開催されるダークホース戦(最終予選および敗者復活戦)に出場できます(参加費用要、旅費は自己負担)。

ダークホースから世界一になった人も多くいるので、ダークホースの参加枠はいつも争奪戦です。

世界選手権決勝大会の観客(Photo by Juuso Haarala)

その2:楽しさをもたらす!笑顔を運ぶ!

エアギター世界選手権は、見ている人は自然に笑顔になり、見ている人、プレイしている人、誰もがワクワク楽しくなる大会です。生で見るとより楽しさ+パッションを実感できるので、機会があれば目の前で見てほしいです。もちろん競技者としての参加でも!

その3:エアギターファミリー

この大会の為に世界各地からエアギタリスト達が集まってきます。大会に加え、ダークホース前日のエアリエンテーション(一般人も参加可)や、決勝翌日の小旅行エアオフも準備され、絆が深まりグローバルなコミュニティが形成され育っています。様々な形での国際間交流が生まれています。

Photo by Juuso Haarala

その4:「Make Air Not War」のイデオロギー

大会となるとそれなりのスキルや準備が必要ですが、本来エアギターは「いつでも、どこでも、誰でも始められる楽器」です。武器の代わりにエアギターを持ち、世界中の人がエアギターを弾けば、戦争はなくなり、環境にも優しく、世界に平和が訪れます。エアギター世界選手権では、このイデオロギーを世界に発信しています。

エアギター世界選手権、「ただの奇祭ではない」と思いませんか?

コロナにより2020年、2021年は現地開催は中止となりましたが、2022年は3年ぶりに世界大会が戻ってきます!日本からも生配信を見られます。世界平和をエアギターと共に願いたいです。

2019年世界選手権決勝後のステージ前(Rotuaari広場)

【関連リンク】

〇エアギター世界選手権(AGWC):https://airguitarworldchampionships.com/en/home/ 

〇エアギター世界選手権動画サイト:https://www.youtube.com/user/worldairguitar/featured 

〇名倉七海2018年世界優勝パフォーマンス動画:https://youtu.be/wbZc70afngg 

〇日本エアギター協会:http://airguitarjapan.blog.fc2.com/ 

この記事のライター

内田 貴子
内田 貴子シニアビジネスアドバイザー(ビジネスオウル:オウル市雇用産業支援公社)
北フィンランド在住。神奈川大学大学院電気工科学科卒業後、モトローラ・ジャパン(現ノキア)で無線通信エンジニア、プロジェクトマネージャーを兼務。都内の仏系外資での営業技術を経て、2010年オウル大学に留学、MBA取得。2011年よりビジネスオウル在職。日本・フィンランド両国での豊富な職務経験や人脈を生かし、企業支援など日本とオウル地域間の橋渡しを行う。