暗い世界を光で彩る「オーロラ」

人生で一度は見てみたいものの常に上位にあるのが「オーロラ」。欧州だとフィンランド北部など北欧北部では、条件さえ合えば日常的に見ることができます。私が住むオウルは北部フィンランドの入口に位置する町で、フィンランドのオーロラ帯(オーロラが平均的に現れる領域)最南端の町なので、2010年に移住してから毎年1回以上はこの町でオーロラを見ています。

近所のクイヴァス湖でのオーロラと北斗七星(2022年10月4日、iPhone11にて撮影)

オーロラは、太陽風と地球の磁場と大気が関わる発光現象で、太陽活動が影響するためオーロラ帯は、常に形、大きさ、場所を変化させています。また雲より遥か上で発生し、発光現象が起こる高度で色が異なります。オーロラは、オーロラ自体が発生していない日もあれば、雨や雪など空が厚い雲で覆われる天気が悪い日も見られないですし、オーロラが発生する時間が起きているとは限らないし、オーロラの強弱も違えば、出現時間も長かったり短かったり、気温が低すぎる日は外に長くいられないし(マイナス20~30度に下がる日もある)、出現してても気づかず見逃すなど、見られる確率が高い北欧北部でも、満足度が大きいオーロラを自身の目で見られるのは年間数えるほど。宇宙天気サイト、オーロラサイトやオーロラアプリ(現在所在地のオーロラ観測確率が高まるとアラームで通知)、オーロラのコミュニティページ(例、Oulu Aurora Spottersというオウル地域に住むオーロラ関心者が集うFBページ)などを利用していても、オーロラとの出逢いは「運」が必須です。

イソシュオテにあるコテージ裏の丘から(2020年3月20日、iPhone7にて撮影)

オーロラは1年中発生する自然現象ですが、特に北欧北部は緯度が高く春夏は日照時間がとても長くなり、白夜が数日間も数週間も続く地域なので、秋冬以外は夜でも空が明るくてオーロラを見ることができません。オウルだとオーロラシーズンは8月20日頃~4月20日頃で、北に行けば行くほど見られる確率は高まるものの、オーロラシーズンは短くなっていきます。

クイヴァス湖に映り込む秋のオーロラ(2018年10月10日、iPhone7にて撮影)
凍ったクイヴァス湖からの冬のオーロラ(2018年3月23日、iPhone7にて撮影)

11月~1月は天気が不安定で雨や雪の日が多く、オーロラを狙うなら9~10月の秋か2~3月中旬の冬が私的にはお勧めです。秋だと気温はプラスで、湖面に映り込む逆さオーロラを見られることもあり、紅葉(ルスカ)を一緒に楽しむこともできます。冬は気温がマイナスとぐっと下がりますが、遮るものがない凍った湖上に立って澄んだ空に舞うオーロラを見るのは格別で、陽が高くなる時期なので白銀の景色や冬空特有の空の色など、冬のうっとりする美しさも味わえます。

※気温がぐっと下がる日にオーロラが見られると思っていらっしゃる方が多いですが、気温が下がるからオーロラが見られる訳じゃなく、オーロラを見るための必須条件が空に厚い雲がない(空が晴れている)こと。よく晴れている夜は放射冷却で冷え込みが厳しくなります。オーロラが見られる晴れの日の夜は気温が下がることが多い、というわけです。

オーロラを初めて見たのはオウルに移住した最初の冬(2010年12月)で、当時の留学生仲間と見た、雲かオーロラかも分からない緑のモヤでした。翌日フィンランド人に聞いたら「オーロラだよ」と。感動が薄いオーロラからのスタートでしたが、それから有難いことに胸が躍るオーロラを何回かこの地で見てきました。その中でも心や記憶に強く刻まれているのがこの3つです。

誕生日に見たオーロラ(2018年3月23日、iPhone7にて撮影)
 

◎誕生日オーロラ

誕生日当日に見た近所のクイヴァス湖からのオーロラは、まるで誕生日プレゼントのようでした。そこにいた全員が時を忘れるくらい空を見上げ続けていたのを覚えています。フィンランド語でオーロラのことをRevontulet(レヴォントゥレット)と言い「狐火」を意味します。北極ギツネが雪原を駆け巡り、その尻尾で舞い上げた粉雪が火花となり夜空に現れた光だという説があります。この誕生日オーロラは、まさにキツネが駆け巡ったと思わせる見事なものでした。

トロムソ1日目のオーロラ(2018年3月2日、現地オーロラツアーガイド撮影)
トロムソ2日目の船上オーロラ(2018年3月2日、iPhone7にて撮影)※船の揺れでブレあり。

◎母と見たオーロラ

「一度は見てみたい」という母。そう何度もフィンランドには来られないので、確率を高めるために北極海沿いの町ノルウェー・トロムソに2泊3日の旅へ。到着時は雪が降ってましたが、夜になると雲が切れオーロラが出現。薄いオーロラでも、オーロラとフィヨルドをバックにした写真は生涯の宝物です。2日目は船上から。満月の光に負けない強いオーロラが縦横無尽に空に現れ、母が流していた感動の涙は一生忘れません。

頭上のオーロラ(2013年3月17日、デジカメにて撮影)

◎オーロラシャワー

近所のクイヴァス湖の湖上から見たオーロラ爆発

周囲360度をオーロラに囲まれ、オーロラシャワーが降り注いでいる地球カプセルに入っている感覚、感動、超幻想的な景色は今でも脳裏にこびりついたままです。

オーロラの由来は、古代ローマにおける暁の女神アウロラ(Aurora)から名付けられたそう。この女神には地上の生きものたちに生きる光を与え、暗黒の世界を取り去ってくれる力をもっているとか。毎回違う顔を見せてくれる自然の神秘オーロラには、希望の光を感じます。

(2022年10月4日、iPhone11にて撮影)

この記事のライター

内田 貴子
内田 貴子シニアビジネスアドバイザー(ビジネスオウル:オウル市雇用産業支援公社)
北フィンランド在住。神奈川大学大学院電気工科学科卒業後、モトローラ・ジャパン(現ノキア)で無線通信エンジニア、プロジェクトマネージャーを兼務。都内の仏系外資での営業技術を経て、2010年オウル大学に留学、MBA取得。2011年よりビジネスオウル在職。日本・フィンランド両国での豊富な職務経験や人脈を生かし、企業支援など日本とオウル地域間の橋渡しを行う。