サウナの楽しみ方

サウナはフィンランド人にとって欠かせないカルチャーです。公共サウナ、コテージのサウナ、ジムのサウナなど、楽しみ方も人それぞれ。今回のブログでは、フィンランドでのサウナの楽しみ方をいくつか紹介できたらと思います。

ジョギングサウナ

私たちが住んでいるテラスハウスには、共同サウナがあります。毎週水曜日は「ジョギングサウナ」の日で、テラスハウスの住民が自由にサウナに入ることができます。フィンランドでは雨の日も晴れの日もジョギングをしたり、ウォーキングをしたりすることがよい習慣とされていて、日課にしている人が多いのですが、汗を流した後にサウナに入りましょうという意味で、「ジョギングサウナ」と呼ばれています。このテラスハウスには、数家族の仲良くなったファミリーがいて、普段から庭で子供を遊ばせたり、ザリガニパーティーや子供達の誕生日会など開いたり、頻繁に交流があるのですが、ママ友の一人の提案で、サウナの前にちょっとしたトレーニングやウォーキングをして、その後にサウナに行くという習慣が始まりました。サウナでは、時にキンキンに冷えたサワー系の飲み物を飲みながら、おしゃべりすることも。近況の報告や、子育てや仕事の話など日常の話に花が咲きます。よく考えたら、近所の人と裸の付き合いというのは、なかなか世界でもフィンランドくらいかもしれません。今は大地が雪に覆われているので、トレーニングはお休み。雪解けの季節が待ち遠しいです。

サウナでは静かに

ジョギングサウナはママ友とおしゃべりを楽しむ場なのですが、公共のサウナでは静けさが好まれています。フィンランドに移住して間もない頃、海辺の公共サウナで忘れもしない出来事がありました。たまたまその日は、スペイン語を話す留学生がたくさん訪れていて、サウナの中でもペラペラペラペラ、大きな声で周りに構わずおしゃべりをしています。しゃべり声に耐えられなくなったのか、一人のおばさまがすくっと立ち上がり、サウナストーブの方に向かいます。すると、ホースを手でつかんでストーブにばしゃーっと派手に水をぶちまけたのです。サウナ中が白い蒸気で包まれ、スペイン語系の留学生たちが「ぎゃーーーーー」とサウナの外に逃げていきました。おばちゃんは、「これで少しは静かになったわね」と一言。一連の出来事に圧倒され、私はうっかり逃げ遅れてしまいました。こんな出来事を目撃したのは最初で最後でしたが、公共のサウナでは静かに楽しみたいというのがフィンランド人の本音のようです。

大自然の中でサウナ

色々なサウナの楽しみ方がありますが、私が一番好きなのは大自然の囲まれたコテージでのサウナタイム。毎年ラップランドの小さな村にある夏小屋をレンタルして、1週間ほど過ごすのですが、そこの小屋には電気がないので、昔ながらの方法で便利とは逆の暮らしをあえて楽しみます。サウナに入りたくてもすぐには入れません。なんでも下準備が大事で、まずは薪をわり、水を湖から大きなバケツがいっぱいになるまで、何回も汲みに行きます。下準備が整ったら、マッチに火をつけて、小さな薪に火をつけます。サウナが暖まるまで、1時間くらいかかるのですが、その間は薪を足したりしながら、気長に待ちます。ラップランドの夏は白夜。夕暮れになるまで、サウナに入ったり、湖で泳いだりして過ごします。たくさん汗をかいて、湖の水で清らかになる。日常から解放されて、最高のデトックスです。

この記事のライター

島塚 絵里
島塚 絵里テキスタイルデザイナー・ライター
フィンランド在住。2007年にフィンランドに移住し、アアルト大学でテキスタイルデザインを学ぶ。マリメッコ社でテクニカルデザイナーとして勤務した後、2014年より独立し、国内外の企業にデザインを提供する他、もみの木のテキスタイルなどオリジナルプロダクトをプロデュース。2022年に初のエッセイ本、フィンランドで絵本を出版。