欧州文化首都 European Capitals of Culture-OULU2026
私が住むオウル市が2026年の欧州文化首都に選ばれたことを受け、欧州文化首都について書いてみたいと思います。
ヨーロッパには欧州文化首都という、欧州連合(EU)のとても大きな文化事業があります。欧州文化首都の目的は4つあり、①ヨーロッパ文化の豊かさと多様性を紹介し、➁ヨーロッパ文化の特徴を共に祝い、③共通の文化領域に属すヨーロッパ住民の感覚を高め、④町の発展に向けて文化貢献を促進する、というものです。また、欧州文化首都に選ばれた町には、様々なメリットがもたらされ、例えば、都市の再生、国際認知度の上昇、地元住民の目から見た町のイメージの向上、地元文化に新たな生活の息吹の誕生、旅行客の増加などです。
欧州文化首都は1985年に始まり、これまで60以上の欧州の町が欧州文化首都の開催都市に選ばれています。欧州文化首都の開催国は現時点で2033年まで決まっており、毎年EU加盟国から2ヵ国が開催国となりますが、2022年、2024年、2028年、2030年、2033年は、EUの経済パートナーであるEU非加盟国の欧州国(例、ノルウェー、セルビアなど)も加わり、開催国が3か国となります。
文化事業による町の活性化のためにEUから多額の文化事業費が提供されることもあり、年々競争率が高まってきている欧州文化首都ですが、どうやって決まるのでしょうか?
開催年の6年前より、通常は各開催国の文化庁を通して立候補の募集が始まり、欧州文化首都に関心ある都市(町)が提案書を提出します。条件を満たしているかなどをチェックする一次審査を経て候補都市が絞られ、一次審査を通過した候補都市は、より詳細な提案書の提出を求められます。様々なプロセスを経て各開催国で1都市を選定し、欧州文化首都事業関連機関の最終チェックを受けて、開催年の4年前に欧州文化首都が決定されます。
決定してから開催年まで、新たな欧州文化首都となった町では計画や戦略を練ったり、必要なインフラを作ったり、地元民の文化事業への関りを増やしていくなど準備をしていきます。同時にモニタリング期間でもあり、モニタリング最後に文化事業費を提供するのに相応しいのか、判断がくだされます。
欧州文化首都になるには気が遠くなる作業ですが、それでも欧州文化首都になることはとても価値があること。フィンランドは過去に2000年にヘルシンキ市、2011年にトゥルク市が欧州文化首都になっています。次のフィンランドの開催年は2026年。最終的に3つの候補都市が競り合っていましたが、長年住むオウル市が2026年の欧州文化首都に選ばれました!!2017年秋から準備していたそうで、努力が実になったニュースを見たときは本当に嬉しかったです。
オウルではOULU2026というプロジェクト名で、オウル市だけでなくフィンランド東北地域や北部ラップランド地域の一部と協力して2026年に向けて準備を進めています。2026年の欧州文化首都としてオウルが掲げたメインメッセージは、”Cultural Climate Change(文化的な気候変動)”。オウルだけでなく、欧州国の多くが少子高齢化、若年層失業者の増加など近い未来に対して沢山の課題を抱えています。Cultural Climate Changeとは、こういった課題(気候変動)をアートや文化事業を通して、持続可能なやり方で新たな活力を生み出す未来を、オウルやフィンランド北部に創り出し根付かせること。更にはCultural Climate Changeで欧州がより結束し、これまで以上にCultural Climate Changeは世界各地で必要になるとOULU2026では謳っています。
欧州文化首都は単なる地元文化の発展、発信だけではなく、どの町にもその向こう側に強いメッセージがあります。文化イベントに合わせて旅を計画してみたり、文化名所・シンボルを巡る旅のスタイルは、その町や人をよりよく知れるので興味深いものになることでしょう。
オウルでは多種多様なイベントが一年を通じて開催されています。一番有名なのはエアギター世界選手権。近年では、フィンランドの暗い11月に開催される光のイベント”Lumo(ルモ)フェスティバル”が毎年規模を拡大していて、地元民が楽しみに待っています。2026年に向けて既存のものはスケールアップし、新たな文化事業も始まってきているようなので、北部フィンランド最大の町「オウル」を欧州文化首都としても是非注目して足を運んでみてください!
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この記事のライター
- 北フィンランド在住。神奈川大学大学院電気工科学科卒業後、モトローラ・ジャパン(現ノキア)で無線通信エンジニア、プロジェクトマネージャーを兼務。都内の仏系外資での営業技術を経て、2010年オウル大学に留学、MBA取得。2011年よりビジネスオウル在職。日本・フィンランド両国での豊富な職務経験や人脈を生かし、企業支援など日本とオウル地域間の橋渡しを行う。
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