フィンランドの「夏休み」

6月の夏至休みの週末から、フィンランドでは本格的な夏休みシーズンが始まります。夏休みは4~5週間取る人がほとんどで、特に7月はまるでフィンランドという国が休暇をとったかのようになります。そんな長い夏休みは忙しい毎日を送るのではなく、ゆったりとした時間を過ごし、仕事からは極力離れ、心身共にリフレッシュする期間で、夏休み後のフィンランド人の顔はどこかすっきりとし、フル充電されて戻ってきます。湖畔や森の中などにあるコテージで過ごす人、トレッキング、自転車やバイクツーリングでフィンランド中を巡る人、キャンピングカーでフィンランド国内を旅する人、セーリングで何日間もかけて港から港へ旅する人が上位に入りますが、海外でのんびりする人、溜まった本や動画を消化する人、勉強する人など夏休みの過ごし方は様々です。人気が高い過ごし方の1つであるトレッキングについて、自身の体験を通して少しご紹介したいと思います。

フィンランドには現在(2022年7月時点)41の国立公園があり、国立公園はトレッキングのメッカです。国立公園は自然保護の意味もありますが、リラックスや自然を楽しむ機会も提供しています。そのため、各国立公園にはハイキングルート、トレイル、焚火ができる場が設けられ、指定キャンプ場、シェルターやハットといった小屋もあり国立公園内で寝泊まりすることもできます。サウナ小屋がある国立公園もあります。大きなリュックを背負って、公園内で寝泊まりしながら数日間かけて長い距離を歩く人もいれば、子供やお年寄り、障害をもった方たちでも行ける簡単で短いルートもあり、夏休みシーズンになると多くの人や家族連れで賑わいます。ペットのワンちゃんを連れている人も見かけます。

ウルホ・ケッコネン国立公園

2021年の夏休み、長年やりたいと思っていた「トレッキング三昧の旅」を実現させることができました。一緒に旅をしたのは友人親子(お母さんと小学校中学年の娘さん)で、約2週間にも及ぶ旅でした。とは言っても、大きくて重い荷物を背負って国立公園内で寝泊まりする旅は負荷が高く、できれば日々違うルートを歩きたいというのが私たちの希望でした。

キルピスヤルヴィでの宿

私が住むオウルは、ラップランドの入口(北フィンランドの玄関口)にあり、フィンランド北部にある国立公園にも割と行きやすい町で、行き先としてウルホ・ケッコネン国立公園(フィンランド北部東寄り、国立公園の中で2番目の大きさ)➡パッラス・ユッラストゥントゥリ国立公園(フィンランド北部西寄り、国立公園の中で3番目の大きさ)➡キルピスヤルヴィ自然保護地域(フィンランド・スウェーデン・ノルウェーの3国国境点で有名)、という国立公園と自然保護地域のはしご旅を計画。そして、各国立公園もしくは自然保護地域で拠点を決め、そこに宿(主にコテージタイプ)を取り、各地で数泊するトレッキングスタイルで夏休みの半分をトレッキングで過ごすことになりました。必要な荷物だけ持って日々違うルートを楽しみ、いっぱい歩いた後は宿のサウナで疲れた体を癒し、その日の体調や天気の移り変わりを確認してトレッキングルートを決め、天気が悪い日には地元の博物館に行ったりとトレッキングをお休みする日も作りました。

フィンランド国立公園マップとマーク

フィンランドのトレッキングルートは、初級、中級、上級とあり、歩きやすいように表示もあります。焚き火場ではマッカラという大きなソーセージを焼くのが定番で、他の旅人との会話が始まることもあります。自然センター(ビジターセンター)があるので、スタッフの方に相談できたり、地図を入手したり、お土産を買うこともできます。各国立公園にはロゴマークのようなものもあり、バッジやワッペンを集めている人もいるようです。ちなみにトレッキングルートの所々にあるトイレは、バイオトイレ(用を足したら木くずや土などの培養土をかける)です。

トレッキング三昧の旅では、これまで体感したことのない雄大な景色にトナカイの大群、そこに行かないと味わえない自然が本当に素晴らしく、疲れの代償以上に心が満たされました。訪れる人みんなで、苦楽を共有している感覚もどこか心地よかったです。

ウルホ・ケッコネンで遭遇したトナカイの大群

ほんの一片のご紹介ではありますが、夏休みはこの地で暮らす人達にとって大切な時期であり期間です。6月の夏至を境に12月の冬至に向かって日照時間がどんどん短くなります。長くて厳しい冬があるからこそ、夏の良さが何倍にも感じられ、だからこそ長い夏休みを取って短い夏を何倍にも楽しみます。

パッラス・ユッラス国立公園

一方で、夏休みは大学生にとってはサマージョブの季節。社会が上手く回っているとも感じます。夏至が近づくにつれフィンランドの人たちはウキウキ、ソワソワし出し、夏の予定を聞き合います。職場で「明日から夏休みなんだ」と聞くと、1か月ほど会えないのかと切ない気持ちにもなりますが、夏休み後のリフレッシュ&エネルギッシュな顔での再会が楽しみでもあります。

キルピスヤルヴィ3国(フィンランド・スウェーデン・ノルウェー)国境点

フィンランド国立公園サイト(英語): https://www.nationalparks.fi/nationalparks

〇ウルホ・ケッコネン(英語): https://www.nationalparks.fi/urhokekkonennp

〇パッラス・ユッラストゥントゥリ(英語): https://www.nationalparks.fi/pallas-yllastunturinp

〇キルピスヤルヴィ(英語): https://www.nationalparks.fi/kilpisjarvivisitorcentre

夏は虹をよく見ます!

この記事のライター

内田 貴子
内田 貴子シニアビジネスアドバイザー(ビジネスオウル:オウル市雇用産業支援公社)
北フィンランド在住。神奈川大学大学院電気工科学科卒業後、モトローラ・ジャパン(現ノキア)で無線通信エンジニア、プロジェクトマネージャーを兼務。都内の仏系外資での営業技術を経て、2010年オウル大学に留学、MBA取得。2011年よりビジネスオウル在職。日本・フィンランド両国での豊富な職務経験や人脈を生かし、企業支援など日本とオウル地域間の橋渡しを行う。